出典:EPGの番組情報
インタビュー ここから「元大学ラグビー監督 岩出雅之」[字]
大学ラグビー選手権で、チームを9連覇を含む10回の優勝に導いた指導者が和歌山県新宮市出身の岩出雅之さんだ。若者の心をつかみ成長させる、その指導法の極意に迫る。
詳細情報
番組内容
大学ラグビー選手権で、チームを9連覇を含む10回の優勝に導いた指導者がいる。帝京大学ラグビー部前監督の岩出雅之さんだ。3年前日本で開かれたラグビーW杯では多くの教え子が活躍。優れた選手を育てる秘けつは「脱体育会系」の手法と「徹底的な観察」。選手の自立と連携を促すだけでなく、自ら時代に合わせてアップデートすることが大切と言う。その指導力の原点は何か。出身地の和歌山県新宮市と長年指導した大学で聞いた。
出演者
【ゲスト】帝京大学教授ラグビー部監督…岩出雅之,【きき手】伊藤慶太ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – インタビュー・討論
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- 会話
- 人生
- 体重
解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)
バチンと当たるように 体重が。
相撲と一緒。
そうそうそう。
そうそうそう。
熱心にラグビーを教える
こちらの男性。
岩出さんが監督を務めたのが
帝京大学ラグビー部。
(実況)トライ!
日本一を決める大学選手権で
前人未到の9連覇。
更に 今年 10回目の優勝。
毎年 選手が入れ代わる
学生スポーツ界における大記録です。
3年前のラグビーワールドカップでは
教え子7人が日本代表で活躍しました。
日本ラグビー界の発展を
人材育成の面から支えてきました。
岩出さんの真骨頂は
変化を恐れない発想から生まれる
常識を覆す指導。
一番正しいことに
リニューアルしていく
変化の繰り返しかなと思います。
その変わり続ける力が
一番 僕にとっては
大切な要素だと 今…
これまでも思ってます。
指導者になって 30年余り。
若者と向き合い続けた日々に迫りました。
太平洋に面した
和歌山県新宮市。
世界遺産 熊野古道がある
自然と歴史の町が
岩出さんのふるさとです。
神倉神社に来ました。
はい。
とても 思い出のある所ですね。
大きくて立派な鳥居ですね~。
神倉神社は 世界遺産の一部で
伝統の火祭りで知られています。
岩出さん この神倉神社
どんな思い出がありますか?
そうですね お祭り
それから 小さい中学生ぐらいの時から
今も お子さんが上っていきましたけど
クラブのトレーニングで上りましたね。
結構 急な石段ですけど
ここで トレーニング? はい。
みんなが上るので そういうものだと
思いながら上ってましたけど。
そうですか。
あと個人的に少し志が持てた時は
朝早く来て 上ったりとか。
はい。
538段。
あ~ 気持ちいい!
ああ~。
新宮に帰ってきたぞ!
この街で暮らした高校時代に
ラグビーと出会います。
地元の子供たちの憧れの的である
岩出さん。
しかし ラグビー人生の始まりは
順風満帆ではありませんでした。
高校1年の時に けがをして 一度退部。
ラグビーをしないまま2年生になった時
岩出さんを誘ってくれた人がいました。
ここで まさに岩出さんは
ラグビーと出会ったわけですけれども。
2年生の夏に いろいろと
思春期のど真ん中なので
考える… もんもんしている時に
声をかけていただいて。
教育実習のね 先生に。
それから 約1年ですね。
高校時代は 本気でやったのは ラグビーを
1年間しか やってないんですけど。
たくさんのことを
その1年間でも学ぶことができましたね。
ある日 タックルの練習をしている
岩出さんを見て
教育実習生は こう言いました。
この ひと言が 岩出さんの人生を
大きく変えることになります。
タックルを褒められた時というのは
どういう気持ちになりましたか?
褒められた うれしさもあるんですけど
何よりも 正しい…
分かんない時に
そういう言葉をかけていただくことの
この思い切りのよさを助ける部分
大きかったですね。
先輩たちが みんな
やってたことっていうのは
体重を… こう 自分の体の体重や
スピードが乗らないやり方を
やっておられたんですね。
しがみつくような
こけるような。
それは みんながやってるので
僕も正しいと思って まねてたんです。
いい姿勢をとって
自分の体重が ちゃんと相手に乗るように。
で 呼吸を合わせながら ポンと。
正しいタックルとは何か。
この先 目指すべきは何か。
それに気付いた この経験が
岩出さんの原点になりました。
みんな 結構 なかなか それが直んなくて。
僕は一発で直れたんです。
それだけなんですけど。
しみついてなかったから 練習不足で。
でも 本当に その…
「目から鱗」だったのは
先輩たちは正しいことをやってると
思ってる僕自身がいて
それを 素直にまねてたんですけど
そうじゃなくて…
正しい方向に導いてくれたっていう…。
結果的に そうですね。
その方は スキルのことを
お話しされただけだと思うんですけど
僕にとっては 心の状態 マインドセットを
しっかりと教わったひと言だったですね。
実際に そのあと そのスキルが
大学4年間の
僕のタックルの全てですからね ある面。
その技術は もうずっと生きましたから。
指導って そういう… 指導者って
そういう大きな存在でもあるんだなって
痛感しましたよね。
間違ったことを教えたら駄目ですね
ということも含めて。
ラグビーの奥深さを知り
岩出さんは のめり込んでいきます。
練習環境には恵まれませんでしたが
だからこそ 得たものもありました。
やっぱり こう 何もないところから
一から積み上げていったっていう
実感はありましたか?
でも あの~ 何もないっていうか
練習試合もなかったですからね。
1年間で練習試合1試合なんですよね。
顧問の先生 サボり過ぎっていうぐらい。
もう 練習だけ。 相手もない。
だから このグラウンドで
自分たちで やってることが多くて。
本当に何もなかったですよね。
でも そういう意味じゃ
本当に与えられて やる
指示されて やるんじゃなくて
一人一人が 本当に
自分の意思でやっていく。
高校生だけの組織で
未熟なこと 失敗も
たくさん あるんですけど
本当に
自分たちで考えてやるという原点をね
こちらで経験させていただいたなと
思いますね。
高校卒業後は 日本体育大学に進学。
ラグビーを続けます。
3年生の時には 大学選手権で優勝。
主力として活躍しました。
大学卒業後は指導者に。
高校ラグビーの全国大会に
7年連続で出場し
岩出さんの名が
知られるようになります。
その実績を買われて
1996年に 帝京大学の監督に就任。
(実況)行った! トライ!
ノーサイド! 帝京大学 初優勝!
2010年 大学選手権 初優勝。
そこから9連覇を成し遂げます。
しかし 頂点までの道のりは
険しいものでした。
選手との接し方に悩み続けてきたのです。
振り返ると未熟だったなと
ひと言に尽きるんですけど
でも… 例えば
その未熟さの例としては
勝ちたいというのが 僕が強すぎる。
選手たち 学生たちも勝ちたいんですけど
それを強要されると
若者は そう乗ってこないので
僕らができることっていうのは
僕が勝ちたいっていうことより
勝たせてあげたい。
で 実は その勝たせてあげたい
っていうことだけでも勝てなくて。
監督になってから7年。
岩出さんの考え方を変える
ある出来事が起こります。
最終戦で これに負ければ
大学選手権に出れない
勝てれば 大学選手権に
出れるっていう試合で
普通 応援しますよね
全国大会 出たいから。
でも それを応援してる1年生たちが
当時の1年生たちが
「負ければいいな」というようなことを
話し合っているのを
僕の知り合いが聞いてて
そこから知ったんですけど
とても寂しいチーム事情だったなと
思いますね。
そこから やっぱり こう
一番充実していないのは
下級生かなと。
そんな言葉が出たのは なぜかなと。
上級生と下級生の関係性なのか
そもそもチームが持っている
その当時の文化なのか。
正直 挫折感っていうか
寂しさを感じるだけでなくて
ここをしっかり変えていかないと
いけないという
使命感を持たせていただいた。
岩出さんは動きます。
掲げたのは 脱体育会系。
先輩と後輩の関係を ガラッと変えました。
掃除や後片づけは 全て上級生の仕事。
当時 ほかの学校では
ほとんど見られない光景でした。
明らかに変わってきたのは
雑務 面倒くさいことを
上級生がやってくれるようになって
下級生に余裕とか
心の余裕や体力の余裕や
何よりも上級生に対する親しみをね
嫌な上級生じゃなくて いい上級生に
変わってきたんじゃないかと思うし
上級生にとっては 本来
下級生が やってくれるようなことを
自分でやるということは
もう一度 自立する
まあ 行動することに戻れる。
日本代表の姫野和樹選手も
当時は このとおり。
一人一人に 岩出さんの考えが
浸透していました。
自分さえよかったらっていう人が
集まったら
絶対 チームになんないですよね。
でも 不安があるとか
あまり いい環境に置かれていないと
人間って
自分のことしか まず守れないので。
他人のことのためにやれっていう
利他の心を持っていくような選手に
学生に育てるためには
大切に まずしてあげることが大事で。
チームの空気感って やっぱ
かなり変わりましたか?
はい。 日本代表で有名なね
堀江くんなんかの時代って もう
彼がギター持って その周りを
1年生が囲んで
歌なんか歌ってるシーンも
どんどん どんどん
下級生と上級生の中に
親しみやすさとか チーム愛とか
言いかえたら
活動上の絆になりやすいような部分に
変わってきましたね。
脱体育会系は これだけではありません。
監督の指示がなくても
考え 行動できるよう
選手同士の会話を重視しました。
しっかり まず 周りを見ること。
要はビジョン しっかり見ること。
それによって
それなりのポジショニングがあるから。
しっかり自分で
自分のやった行動とか
発言もそうですけど 結果を
事実を ちゃんと受け入れて
そこから その行動が起きたポイントは
何かなということを
自分で振り返れるように。
なかなかできないんですよね。
行動だけを振り返っちゃう
結果だけを振り返っちゃう。
でも
「なぜ そんな発想したの?」
「なぜ そんな発言をしたの?」
ということは
一つ一つ やっぱり
理由があるはずなんで
そこに やっぱり上級生たちが
ちょっとこう アプローチを
関わりを うまく持つことによって
下級生が そこに戻って
少しずつ気付いていく。
うん。
最後は 日を重ねてきた分だけの
たくましさと信頼性が
より強くなって
戦いのシーズンに入っていく。
何かこう やっと
本来の味が出てきたかな。 はい。
体力ついてきて。
はい。
頑張れよ。
岩出さんの指導を支えているのは
類まれな観察力。
この日も 監督を
退任しているにもかかわらず
気になった選手には
声をかけていました。
はい。
岩出さん こうやって
練習中 選手のどこを見てますか?
何度か見る中で やっぱり…
たくさん いろんな角度から
いろんな要素を見ることによって
やっぱり人を正確に見極めていくというか
そういうことですか?
例えば 僕の前だけ
いい子 いるんですよね。
僕が見てて
監督に寄ってきて
いい子だからって それだけで
思ってしまってても
本当に周りが そう認めてない場合も
あるので
学生が見た 目とは やっぱり
ギャップも当然ありますから
そこをすり合わせしながら 最終的に
自分は 自分で見た 目ですけど
周りの人たちの情報も得ながら
今の状態 少なくとも
今の状態は こうかなというふうに。
この子は こんなやつだ
ということより
今の状態を うまく
いい状態にあるか
悪い状態にあるかってことを
見極めながら
先ほどの 周りとの関係性を
含めてやっていく。
私も人間観察が好きというか
人を見る癖が ちょっとあって。
あっ 見られてるんですか?
いやいやいや…。
どうやって
アドバイスしたら いいかな…
ちょっと迷ったりする時も
あるんですけど… そういうのは?
やっぱり 思春期って 素直さが
いい方に出る時も マイナスに出る時も
ありますから
本当は 思っていないことを
言ったり やってしまったりするので
それで
本人のことを決めつけてしまうと
全然 違う状態。
本当は すごく悩みを抱えてるけど
わざと 明るく振る舞っている時も
あるか分かんないし。
ちょっと つまらない小さなことで
イライラしてる時も
あるか分かんないし。
その背景を ちゃんと探っていかないと。
言いかえたら
直接的な会話も そうですけど
背景と会話するような
その前提となる彼らが持っている
考え方とか枠組みとか背景とかと
ちゃんと
会話するぐらいのスタンスでいくと
少し見えてくるんじゃないですかね。
実は 僕らが見えてても
答えが終わりじゃなくて
本人が見えるように アプローチ
させてあげないといけないので
先ほど お話ししたように
振り返りをさせる練習を
本当に 頻繁に やってます。
岩出さんは 強いチームを作り
9連覇を成し遂げましたが
その後…
しかし その敗戦も
無駄にはしませんでした。
勝つということは 勝利ということで
よさも そうなんですけど
駄目なとこも
覆い隠してしまうような…。
何か 勝ってるから ノリがよくて
気付かないようなことも起きるので
少しずつ 知らず知らずのうちに
チームの中の ほころびも
あったんじゃないかなと思います。
例えば 上級生と下級生の その文化が
少しずつ少しずつ
本当に 下級生が伸び伸びして
上級生を信頼する
形になっていったんですけど
連覇の中で
それが 何か当たり前になってしまって
いい当たり前も あるんですけど
下級生にとっては あまり…
感謝しない当たり前に
なってしまって
新しくやるべきことを
また振り返ってみて
もう一度 整理し直すこと…
いろいろ まあ オーバーですけど
ちょっと
もがいていましたね。
でも 岩出さん 3年間の中には
コロナもありましたよね。
まあ 今も続いていますけれども…。
僕らができることを
やるしかないので
本当に 自己防衛と集団防衛を
しっかり通して
これまで
見過ごしだった部分を
もっと より丁寧に。
そして 個人だけじゃなくて
仲間のためにも しっかりやろうという
チームワークを
より強化するためにも
逆に ピンチがチャンスだなというふうに
感じました…。
逆境の中でも チームを 再びまとめ上げ
大学選手権 4年ぶりの優勝を
つかみ取ります。
(ホイッスル)
(実況)ノーサイド!
帝京大学 4シーズンぶり 王座奪回!
優勝チームでキャプテンを務めた
細木康太郎選手は
岩出さんの言葉を支えにしていました。
僕が「キャプテンになる」って言った時に
監督が「正しい方向に向かっていけ」
っていうことをおっしゃっていただいて
今 思えば すごい 僕の中で
1年間 軸になるような言葉で
すごい… 僕の このキャプテン業
最後の1年間を支えてくれた言葉かな
と思います。
変化の繰り返しかなと思いますね。
特に この世の中
もう変化が すごく大きいですから。
昔は こうだったとか
こんなやり方で成功したっていう
その方法論の正しさは
あると思うんですけど
今 目の前にあること
そして これからの先で起こることを
ちゃんと見据えながら
一番正しいことに自分を変えてく。
その 変わり続ける力が
一番 僕にとっては 大切な要素だと
今も これまでも思ってます。
岩出さんは 10回目の優勝を機に
監督を退任。
現在は 大学のスポーツ全般を見る
新しい組織のトップを務めています。
スポーツを通して成長する学生を
応援していきたいといいます。
また新しい人生が始まると思いますが
その中で 岩出さんは
どういう目標を
新しく掲げて やっていかれますか?
よく言うのは この幸せより
未来の方が もっと幸せだよという。
何か 4年間だけが よかったっていうね
後々 20代 30代 年を重ねる中で…
苦労もあると思うんですけど
もっと違う人生というか
学生の期間より もっと幸せな人生は
先に待ってるという。
その先を つくっていけるようなね
僕は 人になってほしいので。
本当に 一人一人の方の人生観
またスポーツ観が
本当に 前向きに
どんどん変わっていくような
発想をして 活動を お互い つくっていく。
そういう意味では
いいつながりを つくっていくことから
始めたいですね。
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